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「戦略経営者」2024年5月号

株式会社TKC発行の企業向け情報誌「戦略経営者」2024年5月号に当事務所のお客様である、株式会社スギセキ様がご紹介されました。

戦略経営者コラム 2024年5月号

経営スクランブル ◉スギセキ

顧客ターゲットを的確に設定し地域に必要不可欠な企業へ成長

静岡県の中小燃料販売会社は、いかにして取引先を増やしたか──。

環境に配慮した経営を実践する杉山幹彦社長

環境に配慮した経営を実践する杉山幹彦社長

株式会社スギセキ
業種:ガソリン等燃料販売業
設立:1957年1月
所在地:静岡県静岡市駿河区高松1820-1
売上高:32億円
社員数:約50名

 「静岡県でGTL燃料の販売を手がけているのは当社だけです」
 杉山幹彦社長はこう胸を張る。
 GTL燃料とは主に発電装置や建設機械、重機等の公道を走れない車両に使用される、天然ガス由来の軽油代替燃料だ。性質は軽油と変わらないものの、軽油に比べて二酸化炭素の排出量が8.5%も少ないことから、環境にやさしい燃料として注目を集めている。
 「GTL燃料を扱うようになったのは、ある大手商社からの依頼がきっかけです」
 と杉山社長が話すように、GTL燃料はそう簡単に商材として扱えるものではない。地元の企業や自治体等と良好な関係を築いている、燃料の売買によって発生する税金を適正に納めているなど、高度な経営体制・管理体制が要求されるのだ。
 その点、同社は地域に密着した経営はもとより、子ども食堂への寄付や地域主催イベントへの協賛といった社会貢献活動に注力しており、さらに、顧問税理士であるあおば税理士法人による支援のもと、法人税や軽油税を適正に申告・納付していた。これらの取り組みを評価した大手商社が、静岡県内でGTL燃料を普及するべく、スギセキに話を持ちかけたのである。
 同社では主に県内の建設会社や商業施設、通信事業者、自治体等にGTL燃料等を供給するなど、地域に不可欠な会社として存在感を発揮しているが、現在の地位を築くまでの道のりは決して平たんではなかった。なかでも、取引先の拡大には苦心したと、杉山社長は述懐する。

ビジネスモデルの改革に挑戦

 杉山社長の父親が、個人商店として石油販売業を立ち上げたのが1957年のこと。幼いころから事業主としての父の姿を間近で見てきた杉山社長は、「社会人になったらすぐに父の後を継ぐつもりでした」と振り返るが、父親から「他人の飯を食っておいた方が良い」と勧められたことから、後を継ぐまでの修業として大手輸入車ディーラーに入社する。
 その後、96年に父親の病が発覚。メインバンクに請われる形で自社に帰ってきた杉山社長を待ち受けていたのは、1億円超にのぼる不良債権だった。杉山社長は後を継いで早々に、不良債権の処理やビジネスモデルの転換など、経営の抜本的な改革を迫られたという。
 「当時の売り上げ構成は5%がガソリンスタンド収入で、残りが事業者向けの卸売り上げでした。ただ、ガソリンの卸販売は利幅が小さく、最終的に手元に残る利益が少ないことから、徐々に卸売事業を縮小し、小売りを中心とした事業形態にシフトしていきました」(杉山社長)
 ガソリンの小売事業といえばガソリンスタンドが一般的だが、店舗を開設するには多額の費用が発生する。資金繰りに余裕のないなかで、ガソリンスタンドを出店することは現実的ではない。このような状況で、いかにして小売事業にシフトしていったのか。杉山社長は言う。
 「お客さまに来てもらうのではなく、われわれが売り回ればいいと思い立ち、燃料の出張販売に着手しました。具体的には、公道を走れない工事用車両を多く保有する建設会社をターゲットに、ガソリン等の燃料を出張販売するビジネスです」
 新たな方針を掲げた杉山社長は、すぐさまタンクローリーを1台導入。静岡県内の中小建設会社を中心に、積極的な営業攻勢をかけていった。

大手に照準を合わせる

 しかし、結果は惨憺(さんたん)たるものだった。毎日のようにターゲット企業を飛び込み訪問したものの、「すでに供給先を確保している」「供給先とは公私ともに深い付き合いがある」など、にべもない対応を取られ続けたという。
 だが、杉山社長はくじけることなく前を向いた。そして、停滞する現状を打破するべく、営業方針を変更。この方針転換が後の成功を手繰り寄せることとなった。杉山社長は言う。
 「ターゲットを静岡に支店を構える大手企業に変えたのです」
 修業先での経験から、大手は2~3年で購買担当が変わることを理解していた杉山社長は、静岡に拠点を置く大手建設会社に営業をかけたのである。「最初は冷たくあしらわれてばかりでした」と杉山社長は振り返るが、足しげく訪問したことで次第に商談の場が設けられ、やがて取引関係へと発展していった。
 「大手との取引を機に、その下請けである中小企業にも燃料を供給するようになるなど、芋づる式に顧客が増えていきました」

静岡市駿河区にある本社

静岡市駿河区にある本社

タンクローリーは現在33台所有している

タンクローリーは現在33台所有している

 現在は売り上げの8割がタンクローリーによる出張販売で、静岡にとどまらず県外の企業とも取引を行うなど、着実に成長を遂げている。
 そんな同社が今、力を注いでいるのが環境経営だ。前述したように、同社では地球にやさしい燃料を扱うなど環境に配慮した経営に力を入れており、その内容や成果は自社のホームページなどを通して発信している。
 「環境経営の取り組みを社内外に発信することは、会社を存続発展させるうえで重要であると捉えています。なかでも、社員のご家族にはわれわれの事業を詳しく知っておいていただきたいと考えており、当社の事業概況や環境経営の取り組みについて記した『手紙』を年2回賞与のタイミングで配布しています」
 そう言って柔和にほほ笑む、杉山社長。カーボンニュートラルやEVへのシフトなど、同社を取り巻く状況は刻一刻と変化しているが、強みである「地域に密着し環境に配慮した経営」を通して、未来を果敢に切り開いていくことだろう。

(取材協力・あおば税理士法人/本誌・中井修平)

コンサルタントの眼

コンサルタントの眼

あおば税理士法人
静岡県静岡市葵区相生町6-5
監査担当 佐藤成紀

 スギセキさまは地元の高校生が主催するイベントに協賛したり、社員の生命保険を法人契約で加入したりするなど、獲得した利益を積極的に社内外に還元されています。これは「地域社会に貢献したい」という杉山社長の考えに根ざしたものです。杉山社長自身、会社経営の傍ら保護司としても活動しておられます。
 スギセキさまを担当して10年ほどになりますが、これからも会計や税務を軸として、会社の成長を後押ししていきます。